A01:動的多細胞コミュニティの生体イメージング解析Members
A01:動的多細胞コミュニティの生体イメージング解析
菊田 順一 / Junichi Kikuta
神戸大学大学院医学研究科未来医学講座 免疫学分野 /
Division of Immunology, Department of Future Medical Sciences, Graduate School of Medicine, Kobe University
教授 / Professor
Research map: https://researchmap.jp/jkikuta
研究分担者:
岡田 寛之(東京大学 疾患生命工学センター 助教)
研究内容
生命の誕生とともに進化してきた「骨」は、骨格の維持にとどまらず、骨代謝、造血・免疫など生体機能の恒常性を維持する上で極めて重要な役割を担います。骨髄内には、役割の異なる多種多様な細胞が存在し、複雑な細胞間ネットワークを形成することで、日々多彩な生命現象が営まれています。例えば、骨を溶かす“破骨細胞”と骨を作る“骨芽細胞”が協調して働くことで、骨の構造が緻密に形作られています。骨の再構築(骨リモデリング)は、破骨細胞が“古い”骨を溶かすことから始まり、その後、骨芽細胞が溶かされた領域に新しい骨を形成し、自ら産生した骨基質に埋まって骨細胞へと分化して、骨リモデリングが終了すると考えられています。しかしながら、破骨細胞・骨芽細胞・骨細胞は互いにどのように協調して骨を形作っているのでしょうか。
骨は、生体で最も硬い組織であるがゆえにシングルセル解析が難しく、骨の細胞社会が一体どのような分子基盤や“論理”で統制されているのかはよく分かっておりません。本計画研究では、従来の個々の1細胞レベルでの解析を越えて、「細胞コミュニティ」という概念を導入し、生体内の生理的な環境を保持したまま、生体内の多細胞間の「つながり」を定量的に評価する新たなイメージング解析基盤技術を開発します。確立した技術を用いて、骨リモデリングに関わる破骨細胞・骨芽細胞・骨細胞の各細胞コミュニティの時空間的相互作用を解析するとともに、社会科学の視点を取り入れた情報学的解析により、骨社会における細胞コミュニティを俯瞰的に理解し、骨リモデリングを支配する基本原理の解明を目指します。

主な研究成果
(1) 新規の骨細胞サブセットの同定とその機能解析
空間オミクス解析技術(10x Genomics Xenium)を骨組織へ応用すべく改良し、サブセルラー解像度での解析に成功しました。EDTA/PFA処理によりRNAを良好に保持し、既存パネルに骨特異的な100遺伝子を追加することで、破骨細胞・骨芽細胞・骨細胞を明確に識別。その結果、骨細胞には「破骨細胞の分化を促進し骨リモデリングを誘導する集団」と「骨形成に特化した集団」の2種類が存在することを明らかにしました。本成果は分担研究者・岡田により2024年米国骨代謝学会で発表され、Young Investigator Award を受賞。閉経後骨粗鬆症モデルではこれら骨細胞サブセットの比率が変化することも分かり、新たな治療標的としての可能性が示唆されました。
(2) 骨社会における細胞コミュニティ制御因子の探索
photo-activatable (PA)-GFP マウスを用い、生体内環境を保ったまま標的細胞を光刺激で蛍光標識・採取し scRNA-seq 解析する技術を開発しました。まず肝臓での解析から、Marco陽性の抗炎症性マクロファージが門脈域に存在し腸内細菌の侵入による炎症から肝臓を保護することを解明しました(Miyamoto, Kikuta, et al. Nature, 2024)。この技術を生体骨組織用に改良し、破骨細胞・骨芽細胞・骨細胞を選択的に採取して、破骨細胞-骨芽細胞間の相互作用を制御する複雑な分子メカニズムを示唆する成果を得ました。
参考文献
- Uenaka M, Kikuta J*, et al. Osteoblast-derived vesicles induce a switch from bone-formation to bone-resorption in vivo. Nat Commun. 13(1):1066, 2022. (*Corresponding author)
- Morimoto A, Kikuta J*, et al. SLPI is a critical mediator that controls PTH-induced bone formation. Nat Commun, 12(1):2136, 2021. (*Corresponding author)
- Hasegawa T, Kikuta J, et al. Identification of a novel arthritis–associated osteoclast precursor macrophage regulated by FoxM1. Nat Immunol, 20(12):1631-1643, 2019.
- Matsuura Y, Kikuta J*, et al. In vivo visualisation of different modes of action of biological DMARDs inhibiting osteoclastic bone resorption. Ann Rheum Dis, 77(8):1219-1225, 2018. (*Corresponding author)
- Furuya M, Kikuta J, et al. Direct cell-cell contact between mature osteoblasts and osteoclasts dynamically controls their functions in vivo. Nat Commun, 9(1):300, 2018.
- Maeda H, Kowada T, Kikuta J, et al. Real-time intravital imaging of pH variation associated with osteoclast activity. Nat Chem Biol, 12(8):579-585, 2016.
- Kikuta J, et al. Sphingosine-1-phosphate-mediated osteoclast precursor monocyte migration is a critical point of control in antibone-resorptive action of active vitamin D. Proc Natl Acad Sci USA, 110(17):7009-7013, 2013.
- Kikuta J, et al. Dynamic visualization of RANKL and Th17-mediated osteoclast function. J Clin Invest, 123(2):866-873, 2013.