A03:動的多細胞コミュニティの数理社会解析Members
A03:動的多細胞コミュニティの数理社会解析
加藤 晋 / Susumu Cato
東京大学 社会科学研究所 /
Institute of Social Science, University of Tokyo
教授 / Professor
Research map: https://researchmap.jp/susumucato
研究分担者:
呂 沢宇(東北大学 文学研究科・准教授)
図斎 大(関西学院大学 経済学部・教授)
澤 亮治(筑波大学 システム情報系・教授)
五十嵐 彰(大阪大学 人間科学部・准教授)
研究内容
社会のなかには、さまざまな社会集団が存在し、コミュニティを形成しています。そして、コミュニティ内部で、集団はヒエラルキーに基づいてトップダウン型で意思決定することもあれば、民主的に意思決定することもあります。こうした集団の決定には、個々人の慣習や、人びとの「つながり」なども深く関わっており、コミュニティのダイナミズムの基本要素としての、エージェントの「つながり」は、社会科学分野で広く注目を集めてきました。骨のイメージングで捉えられるところの、破骨細胞と骨芽細胞の動態は、まさに「つながり」に制約を受けながら、一定の自己目的を持つ社会的エージェントのそれです。こうした細胞の動きを普遍的に理解するために、実社会におけるコミュニティの役割を実証的に検討しながら、社会選択理論と進化ゲームの2つの社会数理分析手法を発展させつつ、研究を遂行していきます。

主な研究成果
アロー的社会的選択理論とゲーム理論を軸に、コミュニティおよび関連概念を理論的・数学的に分析しました。主な成果は次のとおりです。
- 投票ルールが時間とともにどう変化するかについての進化的分析を進め、公刊しました。
- ロバート・ノージックのユートピアの安定性の議論に基づき集団の安定性を定式化し、集団にリーダーが存在することで意思決定が不安定になりうることを示しました(コンドルセ陪審定理の独立性の崩れと関連)。
- 集団の合理性概念として、非循環性より強く推移性より弱い “weak quasi-transitivity” を新たに定式化し、その意義を検討しました。
- 人口変動の社会選択の分野で、mere addition paradox の一般的分析や、sadistic conclusion と組み合わせた不可能性定理、種間の人口バランス(animal repugnant/sadistic conclusion)に関する成果を得ました。
- 集団犯罪や不正行為へのサンクション機構、集団内の利他的エージェントが集団に与える影響をゲーム理論で分析しました。
- 文理融合の視点から人間コミュニティと細胞コミュニティの同相性に着目し、イメージングデータを用いて骨の細胞(破骨細胞など)の動きを説明するシミュレーションの基本モデル(公共財供給・外部性モデルに基づく)を構築しました。
参考文献
- Bossert, W., Cato, S., & Kamaga, K. (2022). Thresholds, critical levels, and generalized sufficientarian principles. Economic Theory, 1-41.
- Cato, S., Rémila, E., & Solal, P. (2021). Infinite-population approval voting: A proposal. Synthese, 199(3), 10181-10209.
- Bossert, W., & Cato, S. (2020). Acyclicity, anonymity, and prefilters. Journal of Mathematical Economics, 87, 134-141.
- Cato, S. (2017). Unanimity, anonymity, and infinite population. Journal of Mathematical Economics, 71, 28-35.
- Cato, S., & Ishihara, A. (2017). Transparency and performance evaluation in sequential agency. The Journal of Law, Economics, and Organization, 33(3), 475-506.
- Cato, S. (2016). Rationality and Operators (pp. 35-68). Springer
- Matsumura, T., Matsushima, N., & Cato, S. (2013). Competitiveness and R&D competition revisited. Economic modelling, 31, 541-547.
- Cato, S. (2012). Social choice without the Pareto principle: a comprehensive analysis. Social Choice and Welfare, 39(4), 869-889.